調布市と三鷹市のおよそ43万人の市民が排出するごみを日々受け入れている「クリーンプラザふじみ」。建設前から地域住民との対話を重ね信頼される施設づくりに取り組み、竣工から10年以上経つ今では、地域の学びの場、交流の場としても活用されています。時間をかけ丁寧に築き上げた共創の関係性とは。
焼却するだけじゃない。循環型社会を目指す資源やエネルギーの有効活用
ブランチ調布の隣にそびえ立つ高い煙突。奥深エリアのみなさんにはおなじみの「クリーンプラザふじみ」の煙突です。1日288トンもの焼却能力を持つこの施設には、毎日調布市と
三鷹市から回収されたたくさんのごみが運ばれてきます。
「ごみを確実に燃やすこと」
「燃えて出るガスをきれいにすること」
「ごみのにおいが外にもれないようにすること」
「発生した熱を有効に使うこと」
これはクリーンプラザふじみで行っている4つのことです。焼却炉は最新鋭のストーカ式焼却炉で、自動燃焼制御によりごみの完全燃焼を実現しています。運ばれてきたごみを溜めておく「ごみピット」の見学スペースからは、次々と運ばれてくる可燃ごみをクレーンで攪拌し、焼却炉へと運ぶ様子を見ることができます。
施設を案内してくださったのは、クリーンプラザふじみとその東側にあるリサイクルセンターを運営するふじみ衛生組合の澤田忍さん。コンピューターシステムを使ったごみ処理の技術や、住宅街の中にあるごみ処理施設としての環境・住民に対する配慮や工夫なども丁寧に教えてくれました。
ごみの焼却により発生する排ガスは、最新の処理技術によりダイオキシンなどを除去したあと、高さ100メートルの煙突から放出されます。ごみ焼却施設は排ガスと臭いには細心の配慮と工夫を凝らしています。クリーンプラザふじみでも臭気の除去技術を導入するほか、臭気が外に出ないようごみ搬入用の扉の開閉を完全にコントロールするなど、設備とシステムで臭いの問題を解消しています。奥深編集部は見学スペースでクレーンがごみピットのごみを攪拌する作業をしばらく見学していましたが、ごみの臭いはまったく感じられませんでした。
さらに焼却炉で出る熱や灰は、回収し有効活用されています。熱は電気に変えられ施設で利用するだけでなく、余剰電力は電力会社やリサイクルセンター、三鷹中央防災公園・元気創造プラザに供給しています。2023年度は総発電量のうち70%以上を他施設に送電していました。灰はエコセメントとして生まれ変わり、コンクリート製品などに再利用されています。
ごみを処理するだけでなく資源やエネルギーの有効活用に取り組み、環境負荷の低減や埋め立て処分量ゼロを目指すふじみ衛生組合。ごみ焼却施設の設備や運営方針には、地域住民の声がたくさん反映されています。組合の取り組みや地域への思いについて、組合事務局長の荻原正樹さんに、組合の取り組みや地域への想いについて聞きました。
“迷惑施設”から学びとコミュニティの場へ。対話を重ね築き上げた地域との関係性
調布市と三鷹市の可燃物を含めたごみの共同処理の方針が決まったのは、今からおよそ26年前。ごみ処理施設は生活するすべての人にとって必要不可欠である一方、臭いや排ガスなどへの懸念から、建設にあたっては地域住民の理解を得ることが難しい施設でもあります。可燃ごみ焼却施設であるクリーンプラザふじみも、長い時間をかけて両市の市民と協議を重ね、住民たちが安心して暮らせる設備を整え2013年から焼却炉の運転を開始しました。
「ごみ処理施設については、日本ではまだまだ“迷惑施設”というイメージをお持ちの方も多いと思います。この施設をつくる際も同様で、私たちは2002年から両市の市民の方たちと協議を始め、まずは住民や環境に対する安全に徹底的に配慮した施設のあり方を考えました。ごみ焼却場の必要性は理解いただいていましたが、どこに施設をつくるかということについては、なかなか合意ができなかったんです。当初はまだ地域のみなさんとの関係性は築けていませんでしたし、反対運動もありました」
市民を交えたごみ処理施設の検討会は定期的に開催され、市民と組合の距離は少しずつ近づいていったといいます。年月を重ね安全性を担保できる設備についての合意がまとまり、2006年にようやく現在の場所への建設が決まりました。同時に、当時隣接していた調布市クリーンセンター(※)を他所へ移設し、その跡地に地域住民のための施設をつくることも、市民側から提案され、これがブランチ調布の誕生につながっていきます。
新設されるごみ処理施設について安全面のほかに上がった市民からの要望は、地域の人たちが使えるスペースの機能を併せ持つことと、子どもたちへの環境教育でした。こうした地域の思いを受け止め、クリーンプラザふじみでは市民活動に利用できるスペースとして120人収容の大きな会議室を設け、毎年調布市20校、三鷹市15校、合計35校の小学4年生の社会科見学を受け入れています。
地域住民との対話を繰り返し信頼のもとに誕生したクリーンプラザふじみを、「地域のみなさんに愛される施設にしたい」と荻原さんはいいます。ふじみ衛生組合では市民との協議の場として「ふじみ衛生組合地元協議会」を設置し、年に4〜5回開催される会議で施設の運転状況を報告し、地域からの要望を受け取るなど、コミュニケーションを続けています。また市民団体と協働で年に一度開催する「ふじみまつり」や、市民ボランティアとともに施設の花壇をつくる「花いっぱいプロジェクト」など、地域との接点をたくさんつくることで、親しみのある施設を目指してきました。これまでの道のりをふり返り、現在のクリーンプラザふじみについて、荻原さんは次のように話しました。
「長い助走期間でしたがそのおかげで今があると思っていますし、これからも地域のみなさんと交流しながらやっていきたいです。会議室はこれまで囲碁大会やそば打ち、体操教室など、さまざまな活動に使われてきました。施設のオープンから10年以上が経ち、利用者の年齢層も上がっているので、環境学習会で今後どんなことができるかを検討するなど、若い人を含めた交流を増やしていければと思っています」
※調布市クリーンセンター:調布市の古紙・古布・ビン・カンの一時集積、選別、積替等、および粗大ゴミの受け入れ、処理を行う。2018年に調布市深大寺東町から調布市野水に移転。移転後の調布市深大寺東町クリーンセンター跡地に、公民連携事業による公共・商業の複合施設ブランチ調布が開設された。
リサイクルセンターのリニューアル。そして奥深エリアの新たな共創の可能性
2022年にはクリーンプラザふじみの隣にブランチ調布が開業し、地域交流や高齢者の健康づくりの場として「ふじみ交流プラザ」も開設されました。昨年からはふじみまつりの開催に合わせて、ブランチ調布でも地域のお店や農産物の出店、ステージなどのイベント「まちのハレの日」を開催し、エリア一帯で地域の魅力に触れることのできる機会を創出しています。今後はクリーンプラザふじみとブランチ調布のさらなるコラボレーションも期待できるのではないでしょうか。
「ブランチ調布は地域の方が利用する店舗がたくさんありますので、例えばお店で使った油を使って石鹸づくりをしたり、ペットボトルでロケットをつくったりと、普段は捨てているものを使った取り組みは面白いかもしれませんね」
2025年からはリサイクルセンターの建て替え工事が始まります。3年ほどの工事期間を経てリニューアルオープンするリサイクルセンターは、さらに環境教育の機能を拡充させ、子どもも大人も楽しめる施設になる計画だといいます。
「とにかくみなさんに足を運んでもらえる施設にしたい」と荻原さん。
「新しいリサイクルセンターにはエコクッキングができるような調理室や、壊れたものを持ち込んで直せるようなリサイクル工房などの機能も考えています。まずはお子さんが小さい頃に家族で楽しんでもらい、小学生になったら社会科の授業で訪れる、さらに中学生くらいの方には自由研究などでも活用していただけると思います。それくらい気軽に何度も遊びに来てもらえるようなリサイクルセンターになるので、楽しみにしていただきたいです」
▼ふじみ衛生組合
https://fujimieiseikumiai.jp/