奥深 OKUJIN

OKUJIN

場所

航空宇宙の技術で未来をつくる。
奥深大寺の研究所訪問記

新しい航空技術やこれからの航空宇宙技術開発の基盤となる技術の研究を行うJAXAの「調布航空宇宙センター」。奥深大寺エリアで空と宇宙に思いを馳せながら、航空宇宙の研究活動を聞き、テクノロジーを体験してきました。

研究の蓄積と創造力が生み出す可能性

JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)は、「宇宙科学研究所」「航空宇宙技術研究所」「宇宙開発事業団」の3機関が統合し、2003年に発足した組織です。東八道路沿いにある「調布航空宇宙センター」は、1955年に「航空技術研究所」として設置され、開設から70周年を迎えました。このエリアでは誰もが知る研究施設ですが、実際にどんな研究が行われているのか、どんな人たちが働いているのかは知らない人も多いはず。調布航空宇宙センターで広報を担当する荒瀬梨絵さんに、研究施設の仕事や社会に向けた取り組みについて伺いました。

「JAXAといえば宇宙というイメージが強いと思いますが、ここでは主に航空機関係の研究が行われています。機体に使われる素材などの基礎的な研究もあれば、電動航空機や超音速輸送機などの研究もしています」

未来の航空機のイメージ (C)JAXA
未来の空飛ぶクルマ社会のイメージ (C)JAXA

同施設で働く人の多くは研究者であり、さまざまな研究設備や試験設備を使った研究が、ここでは日々行われています。荒瀬さんはその中で広報という役割で、研究者とコミュニケーションを取りながら、研究の内容や成果を社会に向けて発信しています。組織統合前から同施設に勤める荒瀬さんですが、純粋に研究機関で働くことに興味があったといいます。

「私はもともと空や宇宙が特別好きだったというわけではありません。当施設が何を研究しているのかも知らなかったのですが、研究している人の側で働くのは面白そうだなと思ったんです。ただ入職してからは研究と距離のある部署で業務に就いていて、近年になってようやく研究を目の当たりにする部署に配属されました。広報としてさまざまな分野の研究の内容や進捗を、勉強しながら理解し、プレスリリースなどで社会に発信しています。研究者のみなさんは、研究が社会に実装され、暮らしに役立つようになることを目指していますが、それをお手伝いできることがとても嬉しいです」

JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)航空技術部門事業推進部 荒瀬梨絵さん

奥深大寺で体感できる航空宇宙技術の研究の軌跡

JAXAの中で航空技術の研究を推進する唯一の拠点である調布航空宇宙センターでは、航空宇宙の研究活動にまつわる展示室や、戦後初めて日本で開発・製造された旅客機「YS-11」のコックピットなどが一般に向けて公開されています。これらの展示は、次世代の航空機や宇宙機の開発につながる最先端の研究が、実際に奥深大寺エリアで行われていることを感じさせてくれます。奥深編集部は荒瀬さんと一緒に展示室を巡り、飛行実験に使われた小型超音速実験機「NEXST-1」の機体や、国内初の純国産ターボファンエンジン「FJR710/600S」のほか、宇宙輸送システムの飛行実験で使われた機体や模型など、研究と技術発展の歴史を垣間見ることができました。

2005年にオーストラリアで飛行実験を行った小型超音速実験機「NEXST-1」
短距離離着陸(STOL)実験機「飛鳥」に搭載された、日本で初めて耐空性基準を満たした国産エンジン「FJR710/600S」

同施設の重要な試験設備である風洞のミニチュア模型も、展示室の見どころの一つです。風洞とは、機体を模擬した模型を設置し、そこに人工的に空気を流して、空を飛ぶ航空機や宇宙機の周りに空気の流れを作り出すことにより、空気力学的な性質や、圧力分布を調べる設備です。同施設では低速域から極超音速域まで、幅広い気流条件での試験に対応できるさまざまな種類の風洞設備を備え、航空機や宇宙機の開発に不可欠な研究の基盤を担っています。

展示室にある風洞のミニチュア模型。荒瀬さんが示している部分が機体模型を設置する測定部。このミニチュア風洞模型では、ここに航空機の翼の模型を設置し、実際に風を流すことで飛行機が浮き上がる力(揚力)を感じることができる。試験に使う最も大きい風洞は、測定部断面が6.5m×5.5m。航空機用では国内最大の風洞である。

展示室中央にある人気のコーナーは、宇宙機の操縦や宇宙飛行を擬似体験できる「スペース・ミッション・シミュレータ」です。奥深編集部もさっそく搭乗し、宇宙ステーションや月を巡って無事に地球に帰還。未来への期待を膨らませました。

「スペース・ミッション・シミュレータ」で宇宙ステーションを目指す

体感できる、研究者に会える、子どもたちの未来につながる取り組み

調布航空宇宙センターと地域との接点は、展示室以外にもありました。毎年4月の科学技術週間に合わせて開催される「調布航空宇宙センター一般公開」のイベントは、普段は見られない試験設備を体感し、研究者から研究や技術の話を聞くことができる貴重な機会です。

「常設の展示室も一般公開のイベントも、老若男女、さまざまな年齢層の方が来場されます。特に一般公開は近隣を含め広く一般に開く年に一度のイベントなので、何時間もかけて遠くから来てくださる方もいますし、家族連れの方も多いです。今年は、2025年4月20日(日)に『調布航空宇宙センター一般公開』の開催を予定しています。開所70周年を記念した企画も用意していますので、ぜひご参加ください」(3月中旬に特設サイトを公開)

また、高校生に向けた体験学習プログラム「エアロスペーススクール」の開催や、調布市や三鷹市の小学校の社会科見学受け入れなども、子どもたちの学びの場になっています。

「『エアロスペーススクール』は毎年3日間のプログラムで、全国から応募のあった高校生たちが施設を見学し、講義を受け実習を行います。これまでの参加者には、飛行機が好きでパイロットになりたいという子もいれば、研究者になりたいという子もいました。スクールに参加し興味の合う仲間と出会い、みんなが生き生きと交流する姿がとても印象に残る3日間です」 日本の航空宇宙技術の進化のため、さまざまな研究を繰り返し、新たな可能性を切り拓いてきた調布航空宇宙センター。学びを広く社会に提供し、次世代の研究を担う子どもたちに未来への希望を与えてくれる場所として、奥深大寺エリアで研究の歴史を更新し続けていきます。

Profile
JAXA調布航空宇宙センター

調布市とともに生誕70周年を迎える調布航空宇宙センターは、航空機にまつわる様々な研究をしていますが、敷地が意外と広いのです。年に1回行う一般公開では、その広さに驚かれる方も。また、「施設の中ではどんなことをしているの?」の答えも一般公開の中に見つけることができます。ぜひ遊びにいらしてください!

展示室

調布市深大寺東町7-44-1/10:00~17:00
休館日:日曜日、月曜日、祝日、12/29~1/3 ※臨時休業あり
自由見学は予約不要です。
守衛所にて入館のお手続きをお願いいたします。
Point!

奥深大寺推しポイント

調布航空宇宙センターには調布飛行場に隣接する調布航空宇宙センター飛行場分室があります。近くにある「プロペラカフェ」では飛行機を見ながら食事をすることができます。ゆったりしたおしゃれな店内で、飛行機を見ながら食事をする…憩いのひと時です。