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奥深 OKUJIN

OKUJIN

シェアするキッチンから始まる
自分たちのお店づくり

深大寺そば粉や国産おからパウダー、米粉などを使ったグルテンフリーカフェ「Pound story_LOWELL(パウンドストーリー.ロウエル)」。栄養士の資格を持つ林舞さんが、“おいしい”にこだわり心身に負担のないスイーツやランチを提供しています。

食べることは生きること。食に悩む誰かに届けるために。

深大寺から南に延びる参道の突き当たり、深大寺通りを挟んで向いに位置する元お蕎麦屋さんの空き店舗「いづみや」。2018年から有志メンバーが日替わりでお店を出したりワークショップをしたりする「深大寺いづみや」となり、地域の新たな魅力に出会える場として再活用されています。ここで月に数回オープンする「パウンドストーリー.ロウエル」は、小麦粉を一切使わないグルテンフリーのカフェ。深大寺そば粉100%のシフォンケーキや、国産のおからと地元の農産物を使用したパウンドケーキ、砂糖もバターも使わないガトーショコラなど、体への優しさに溢れたスイーツが人気です。

パウンドストーリー.ロウエルを運営するのは、調布生まれ調布育ちの林舞さん。小麦アレルギーの人にも糖質制限をしている人にも、我慢しないで食を楽しんでほしいと、1年ほど前から深大寺いづみやで出店しています。

「食べることは生きること」。

栄養士になったきっかけを聞いたら、そんな言葉が林さんの口から出てきました。

「祖母が亡くなったときにそう感じて、持病のあった父に健康的なごはんをつくってあげたいと思ったんです」と林さん。当時、すでに社会に出ていわゆる“OL”をしていた林さんは、野菜ソムリエの資格を取り、さらに食の世界へと進むべく仕事を辞め、短大で栄養学を学びました。

「すごく回り道でしたが、手に職を持ちたいと思っていたし、自分が一生できる仕事ってなんだろうと、そういうことを考えるタイミングだったんです」と穏やかにその頃の心境をふりかえります。そうして栄養士の資格を取得した林さんが選んだ進路は“一次予防”。これは、生活習慣改善や健康教育などによって病にかかることを予防するもので、日々の食事に対する考え方の基盤となる栄養学は重要な役割です。短大を卒業した林さんは、調布市内の保育園で栄養士として働くことになりました。

林さんがグルテンフリーの料理に取り組むようになったのは、この保育園での栄養士の経験があったからだといいます。

「小麦や牛乳など、さまざまなアレルギーを持つ園児たちに食事やおやつをつくっていました。最初はなかなかうまくいかなかったし、業者から仕入れたものはあまりおいしくないって、子どもが食べてくれないんです。それがきっかけで、家で試作をするようになりました」

小麦粉とはだいぶ扱いの違う米粉を使いこなせるようになるまで何度も失敗を繰り返し、そのうちに「楽しくなってきた」という林さん。当時は園児たちに、何を入れてほしいか、何がおいしかったかなどヒアリングしながら試行錯誤していったそうです。さらに、家族や身の回りの人たちからの反応が、林さんの原動力になっていきました。

「子どもたちは、自分のリクエストが反映されていると張り切って食べてくれて、それが嬉しかったです。あと、身近なところでは持病のために好きなスイーツが食べられない父がいたり、職場には残業が多くて夜食に悩む同僚がいたりして、ヘルシーなお菓子をつくったら喜んでくれました。お菓子を食べた人たちから反応がもらえるようになって、これはほかにも必要な人がいるかもしれないからやってみようと思うようになりました」

アレルギーに悩む子どもたちや健康に気を遣う人たちに喜んでもらえるものを。林さんのつくるお菓子は、基本的に甘さ控えめで、ベースのそば粉や米粉、おからのほかに、旬の農産物もたくさん使われています。ヘルシーな材料のみを使いグルテンフリーを貫くことと、お菓子そのもののおいしさを追求すること。そのどちらも、林さんにとっては譲れないポイントでした。

「“体にいい”とか“低糖質”と聞くと、おいしくないイメージを持つ人もいると思うんです。だからこそ味は諦めたくなかったので、おいしさにこだわる中で地元のものを使うようになりました。新鮮な野菜は本当においしいし、どう使えるかを考えるのがすごく楽しいです」

試作を重ねた春菊を使ったパウンドケーキやシフォンケーキはパウンドストーリー.ロウエルのレギュラーメニューとなり、ランチにも地元をはじめ季節の野菜がふんだんに使われています。

大好きな深大寺でお店をシェアする豊かさ。

林さんと深大寺いづみやの出会いは2021年の秋。その頃林さんは、実家が経営するアパートにコロナ禍で空き室が増えたことを知り、アパートの空き室を活用して夫婦でお菓子のお店を開こうと考えていたそうです。そんなタイミングで友人が教えてくれた地域のシェアスペースが、深大寺いづみやでした。

「お店をやろうという話はしていたのですが、仕事もしているし商売を始めるのは少し荷が重いなと思っていたんです。でも夫がやる気で、“いいじゃんいいじゃん”って。彼はいつか飲食店をやりたいという夢があったみたいで、すでに設備が整っていて始めやすい環境にあるいづみやのことを教えてもらい、すぐに会員になりました」

幼少期から慣れ親しんだ深大寺エリアでお店を出すことは、林さんにとってはとても自然な流れだったようです。「深大寺だかららやろうと思った」と林さん。

「私はもともと地元が大好きで、子どもの頃からこのあたりは生活圏でした。すぐそこにあるテニスクラブや総合体育館にも行っていましたし、本当に自然が豊かで、水生植物園や植物多様性センターで植物や昆虫を観察したり…。私にとってはヒーリングスポットになっています」

地域の旬の野菜がたっぷり使われたグルテンフリーランチ

複数のメンバーでシェアして使う深大寺いづみやでの出店は、会員メンバーとの交流や、すでにいづみやの常連となっているお客さんとの出会いなど、単純に場所を借りてお店を出す以上のたくさんの豊かさがあるようです。ほかの会員メンバーと同じ日にお店を開く“コラボ出店スタイル”も深大寺いづみやの醍醐味のひとつだと林さん。コラボ出店の心強さや楽しみを教えてくれました。

「お店に来てくださるお客さんは本当にみなさんフレンドリーで、コラボ出店のときには両方のお店を楽しんでくださいますし、出店している私自身も楽しませてもらっています。いづみやのメンバーはご自分の領域に特化した個性的な方ばかりで、メンバー同士の飲み会などでは家族のように迎えてくれて、同じ場所をシェアして使っている仲間だからこそわかる大変さなどを相談できたりするのも嬉しいです」

取材に訪れた日も、パウンドストーリー.ロウエルの隣では、つぼ焼き芋の「パタータドルチェ」が出店していました。林さんと同じく野菜ソムリエの資格を持つ店主が、大きなつぼを設置して焼き芋の準備を始め、取材が終わる頃には焼き芋のおいしそうな匂いが深大寺いづみやに漂っていました。

環境を受け入れ楽しみながら日常を歩む。

暖かい陽気の春がくると、深大寺周辺は一気に人出が多くなります。パウンドストーリー.ロウエルの、月に数回の出店を増やす気はないのかと聞いてみると、夫婦でお互いに仕事を持ちながら週末にいづみやでお店を開くというこのスタイルが、今の林さんにとってバランスが取れるやり方だといいます。

「以前、保育園で働いていた頃に子どもを産んで、仕事と生活が両立できなくなってしまったことがありました。仕事はとにかく真面目に集中して取り組むタイプだったので、心身ともにバランスが崩れてしまって。それで、今は別の仕事に就いていて、カフェは月に数回のペースで。子どもはまだ小学生なので、あまりカフェの活動を広げすぎないようにしています。パウンドストーリー.ロウエルは現状では商売として成り立っていませんが、将来的には実家のアパートの一角をカフェにするという目標があるので、今は経験を積むことと、楽しみながら自由にやることを大切にしています」

崩れたものを立て直す大変さを経験したからこそ、守るべきものをしっかりと見据え、心地いいペースを大切に歩む林さん。今はいづみやという実践の場で、出店するごとにたくさんのことを学び経験とスキルを積み重ねています。

計画通りにいかないことも受け止め夫婦で試行錯誤しながら、パウンドストーリー.ロウエルは続いていきます。

「アレルギーを持つ人やグルテンフリーを実践する人など、食に気を遣う方たちにも問題なく楽しんでもらえるお店にしたいし、逆にまったく食のことを意識していなかった方にも食べてもらいたいです。それで、こんなにおいしいんだったらちょっと食生活を気にしてみようかなと思ってもらえるような、誰かの健康や生活をよくするきっかけやヒントになれたら嬉しい。そんなことを思いながらつくっています」

Profile
林 舞

家族の入院がきっかけで「食べることは生きること」と気付き、OLを辞めて学生に戻り栄養学を学ぶ。野菜ソムリエの資格も取得。その後は栄養士として保育園に13年勤務。添加物を含まない手作りの食事とお菓子作りや、小麦・乳・卵不使用のアレルギー代替食作りを経験。多くの人が「ライフスタイルの中にグルテンフリーや低糖質を楽しく取り入れられるように」と願い、現在は日曜日中心に奥深大寺エリアにて出店している(不定期)。

パウンドストーリー.ロウエル

深大寺そば粉と国産おからパウダーを使った低糖質ケーキと、米粉の生パスタが食べられるグルテンフリーカフェ。
調布市深大寺元町2-33-5深大寺いづみや / 出店の予定や営業時間はInstagramにてご確認ください
Point!

奥深大寺推しポイント

奥深大寺エリアおすすめスポットは、神代植物公園とお蕎麦屋さん。公園を散歩してお蕎麦を食べ、Pound story_LOWELLでカフェタイムを楽しめば、自然と健康的で心の栄養も補える1日になること間違いなしです!